この太刀 なかなか良い
そういうと 童顔の 武士が 満足げに 笑みを浮かべた
人を切る道具であるはずの 刀剣 に 愛着が沸くのは 不思議だろうが
ままあるらしい 職業病だろうか?
より良い刀を 求めるのは 差し詰め コレクター欲 に似る。

しかしながら その若武士 いつまで経ってもその刀を 鞘に収めようとしない
切先から刃文はじめ くまなく 入念に さだめている。
本当に良い刀なのか を 気にしているようである。
時間を気にしながら 小腹が空いても 三度の飯よりなんとやらだ
武士としては 駆け出しの身 ながら 将来有望の 若武士よ
切先を 手のひらで 刃を品定めするように 覆うと 何かを感じたらしく
この刀が お眼鏡にかなうに 等しいことを 解した
すると この刀を 二、三 回 抜刀するように 試し斬りの 構えをとり
やはり自らの目が間違いでなかったと 安心したような 表情を浮かべたところで
我が刀 愛た その武士は また稽古に励むために その場を後にした
太刀筋(たちすじ) よし